★★★★☆限りなく★×5に近い★×4で。でもまだ上巻しか読んでいないので、最後まで読んだら気が変わるかもしれませんが…。あんなところで「以下続く」なんて殺生すぎです。水斗行っちゃダメ!
まるでテレビドラマのような起伏のある展開と静謐な世界観で、とても面白く読めました。
BL界の白い巨塔。華藤さんはBLの萌えもきちんと折り込みつつ、こういった特殊な世界観へ読者をひっぱりこむ力が凄いです。
様々な葛藤や苦悩を持ちながら医師を続けている水斗(受)の前に現れた、NY帰りの敏腕外科医・樋口(攻)。樋口が水斗に、自分の技術を教える代わりに身体を寄越せと交換条件を持ちかけた時は、
NY帰りのガチホモ登場って感じでした。笑 予定調和にゾクゾクさせられる。
そんなテンプレ萌えもありつつ、内容は水斗の葛藤が淡々と語られている静かな展開です。水斗はあまり感情を表だしにしない性格で、辛い現実から逃避するために、昔の思い出である湖の風景や、父親の形見である骨格標本を心の拠り所にしています。
水斗の心理的原風景である湖と、ショパンの別れの曲など、水斗の中の辛く激しい思いとは正反対の、物静かな象徴が使われることにより、一層水斗の中にある深い葛藤が心に響いてくるんですね。
最初は利己的な思いから樋口を利用していた水斗でしたが、段々と樋口へ恋心を募らせる経緯も素敵でした。
迷いの無い素晴らしい樋口の技術を目の前にして、
「自分が死んだらこの男に解剖してほしい」と、樋口の指先に恋の予兆を宿らせるとこなんかも、凄く良いシーンでした。外科医の設定がめちゃくちゃ活きてる。
それに、人を好きになる瞬間ていうものは、自分が心血注いでいることに対して意外な投石を水面に投げかけられたとき、ふわりと沸き上がりますよね。そんなさりげない感じがとても良く伝わります。
そして、心臓外科医である2人が、理論や理屈で解決できないところへ放り出されてしまった後半の展開も良かったです。わらべ返りしてしまった水斗と暮らす、樋口の心の変化や成長が萌える。
記憶を失ってからの水斗と樋口のやりとりも、様々な角度から萌えたり、真剣に一緒に悩んだり、樋口や水斗の心理描写に心を沿わせてみたり、とても巧みな表現が多くて、この世界観にとても引き込まれました。こういう雰囲気の小説が大好きなので、久々に自分的ヒットが来ました。
余談ですが、華藤さん、はやく同人誌の再販をしてほすい。まんだらけで買うのはイヤですじゃ。(ってまんだらけでもあまり出回ってなくて、ガラスケース入りのプレミア価格なんですがね…)